“千景”を掲げた女の子が、“俺”を見つめたままひくんと肩をこわばらせたのを見て、届いたんだと嬉しくなる。
今日のパフォーマンスはこれでおしまい。
あとはアウトロをやりきって、最後に蓮のキラーフレーズで締めるだけ。
やっと掴めたような気がする恋の余韻に浸りながら、幸せな気持ちでセンター後ろのポジションへと帰っていく。
ああ寂しいな、なんて前にも感じた思いを抱えて終わろうとすると——
次は蓮に腰を抱かれてセンターの画角に引っ張り込まれた。
笑顔の裏に走る紫と水色の亀裂。
え?なんで?と私の笑顔は曖昧になる。
昊はひとり一仕事終えた顔。
小悪魔の笑みで余裕を見せるのは——
蓮、ただ1人だけ。
抱き寄せられた体が密着したと同時、くいと顎を持ち上げられる。
ぱちくりと瞬く目に、とびきり甘くて軽い熱視線がぶつかった。
「今日から俺と、恋しよ?」
——囁くような激甘セリフ。
観客席が震撼するほど湧き上がる。
カメラに抜かれているというのに動けなくなっている私の前で、蓮は愛想良くひらりとカメラの向こうに手を振る。
そのままスタジオが転換して、暗闇の中に消えないざわめきと5人のシルエットだけが残った。



