だるまさんが……ワラッタ

「帰らないの?姫奈。あ、もしかして失恋?」
 姫奈の双子の姉の加奈は、帰り際に妹の教室に行くと、窓から上半身を乗り出して泣いている妹の姿を見つけたのだった。
「……。」
 返事のない妹に、加奈は一発食らわせた。
 見事な蹴りが妹の背中にきまった。
「……ったい!何よ、加奈……何か用事でもあるの?ないなら帰ってよ!!!!!!!」
 ただならぬ声に加奈は衝撃を受けた。
「え……ちょっとどうしたの?様子変だよ。ねぇ、裕二は?先帰っちゃったの?」
 裕二というのは、妹と加奈の幼なじみのサッカー系男子だった。
 毎日、一緒に帰っている姿が印象的で、学校ではカレカノといううわさが広まっていた。
「残っているの誰?早く出てよ。カギ閉めるの日直の仕事なの。って……姫奈……ごめん、なんでもない。」
 日直の女子は姫奈を見て、そそくさと鍵を置いて帰っていった。
 
 みんな、姫奈がおかしいことに気づいているんだ……。

 そして、もう一度ガラッと音がして中に人が入ってきた。
「あっ……!優斗さん?どうしてここに…。」
 教室に入ってきたのは、裕二の二個上の高校一年生の兄だった。
 去年は高校受験で忙しそうだったが、今年は無事、難関校に合格し、人生を楽しんでいる様子だ。
「どうしたんですか?どうして…。」
 優斗は目の前にいる加奈を見えないもののように無視をした。
「ねぇ!優斗さん!」
 加奈は、無視されたことにムキになっているんじゃなかった。
 反応もない…いや、反応しても普通じゃない、姫奈。
 何故いるのか、何をしようとしているのか分からない…そして、意識があるのかもわからない優斗さん。

 裕二にきっと、何かあったんだ。

 教室のドアを開けると、冷気が私を体を打った。
 
 でも、それより早く……さっきの女子生徒を探さなければ……。

「あっ……!」
 
 やっと見つけた、と思ったら信号が赤に変わってしまった。
 女子生徒は異常な速さで歩いていた。分速……200m?いや、それは人間では無理か…。

 信号が青に変わり、加奈は必死に走り出した。
「あ、あのっ!」
 さっき女子生徒がいたはずの場所に、彼女はいなかった。
 それもそうだと思い、また走り出した。
 




「ねぇ……ねぇ……だーるまさんが……こー…ろんだ……」

 




 後ろを振り返ると、そこには女子生徒が立っていた。

「あ!あの……裕二について何か知らない?中学二年生の男子で……知ってるわよね?」

 

 しかし、その女子生徒は返事をしない。

「トマレ……トマレ……」





「トマラナイト……」

 ちょうど、白い猫が一匹加奈の横を通り過ぎた。