ハウスクリーニング山代には休みが無い


「なんでお前まで来てんだよ?」

「風ちゃんのお母さんに心配だから付いてってあげてって言われたんだ。それに俺お前の親友だしさ」

「本当は?」

「新しいガンプラ買ってあげるから仕事中の風ちゃんの写真撮ってきてほしいって一眼レフのカメラ渡された。今回の俺は記録係なんだってさ」

「またガンプラか!一回ガンダムから離れろ!」

ついいつもの癖で怒鳴ってしまった俺の声が大浴場に反響した。似たり寄ったりな爺さん達が一斉にこちらを振り向いた。

「温泉来たからってはしゃぎすぎだよ風ちゃん〜!」

「今さっき満面の笑顔でパンツ履いたまま風呂に浸かっちまった奴にあーだこーだ言われたかないね」

「ちょっと脱ぎ忘れたくらいで煩いな!」

「帰りノーパンの奴に煩い呼ばわりされたかないわい!」

バッシャバッシャお湯をかけまくって喧嘩する俺らはもはや幼稚園児。

「ぜーぜー…。…ところで風ちゃん、今日は何の仕事なのさ?」

「ぜーぜー…。…親父の話しだと今日この温泉に麻薬の密売人がやってくる予定なんだとよ。そんで、この温泉でさりげなく取り引きが行われるらしくて、そこを押さえろって言われて俺はやって来たんだ」

「えーーーーーーっ!!?」

「やかましい!」

「風ちゃん始末屋じゃなくて警察官に転職したら?クイックル刑事《デカ》として日本警察の顔になれるよ、きっと!…ーで、密売人の特徴は?」

「白髪の爺さん。名前は小田《おだ》。ちょっとハゲで眉毛が太くて痩せ型の小さい爺さんらしい」

「もれなくこの大浴場に居るお爺さん全員一卵性双生児なんですが!?」

「だからいちいち叫ぶな!」

爽太を湯船の中に押し込むと、口元までお湯に浸かった爽太と2人で目の前を行き交う小田さん達をしばし目で追いかけた。