ハウスクリーニング山代には休みが無い

1.

 ここはまるでどっかの妖怪屋敷。

薄紫色のサングラスをかけ、こっちを鋭い眼光で睨みつけてる(ように見えるだけの)河童、彼は竜太郎《りゅうたろう》と言い、隣の鬼女紅葉は富士子《ふじこ》。

彼らは人間であり俺の両親であり、山代一家の現在の頭とその嫁であり、ハウスクリーニング山代の店の裏に建てられた趣ある一階建ての古民家は妖怪屋敷ではなく間違いなく俺の実家だ。

俺と目元だけ超似てる親父が煙管から甘い金木犀の香りがする煙を ふ〜… と静かに吐くと「おい、息子」と息子を名前ではなく息子呼びして手招きしてきた。

「なんだグラサン糞河童」

俺が親父をそう呼ぶとお袋が「あらあら」とくすくす微笑んだ。

「…息子、今俺に何て?」

「グラサン糞河童が俺に何か用かって聞いたんだ」

河童の眉がピクッと動いた。

「あんだコラ!?おめぇ、自分の親父《おやず》さ向がっで、糞はねぇべっちゃまず!おだづなよっこの、ほんでなすがっ!!」

「エ、イマ何テ?」

東北生まれ東北育ちの親父は普段は標準語で話してるがキレた時だけ方言が出てくる。

そのため都会生まれ都会育ちの俺には親父にキレられると何を喋ってるか分からなくなるから非常に困る。

生まれも育ちも俺と同じシティーガールのお袋はキレる親父の隣でずっとにこにこ笑っている。どうやらお袋も親父が何て言ったか理解していないらしい。

昔からお袋は困り事があると終始微笑んで済ませる悪い癖がある。

「あ〜あ〜、がおった、がおった!!こりゃ、めんこいワンコの一匹でも飼わね"ど、やってらんねっちゃや!」

今度はガオガオ言い出し始めた。そろそろ我が家に東北弁専門の通訳さんを1人雇うべきだと本気で思う。