海姫物語

そんなこと考えてもいなくて、姫奈は徐々に自分の顔が熱くなるのを感じた。
視線を落とし、畳のささくれを指先でいじる。
「わ、私の話はもういいので、大輝さんのことを教えてください」
早口に言うと大輝は透明な灰皿にタバコを押し付けた。
タバコの残りがが姫奈の鼻腔をツンッと刺激する。
「俺は大学生だよ。昔この変に祖父母の家があって夏休みにはよく遊びに来てたんだ」
「今はもう家がないんですか?」
祖父母の家があるのなら、民泊に泊まる必要はない。
「もう亡くなって、家も他人が暮らしてる」
「そうなんですね」
知っている場所が変化していくのはどういう気持だろうか。