私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


「あらあらもう、キレイなお顔にこんな傷なんてつけてくれちゃって!」
 
「許せないっスね! アタシぶっ飛ばしに行きますよ!」

 広い自室の中で、私は二人の友人に囲まれてやいのやいのと世話を焼かれていた。
 
 リーネはたくさんの食べ物を持ち込んで、食事の準備をしてくれている。
 
 マリエルは立派な救急箱を持参して、ていねいに処置をし直してくれていた。
 
 事件の直後に医者は来てくれたのだが、本当に最低限の診察——悪質な魔法が使われていないかなど——だけで済ませてしまったのだ。
 
「ほんとうに……ひどいわ。女の子の顔に、こんな傷つけて……」

 マリエルは私の頬と顎の辺りをていねいにていねいに消毒し、清潔な布で守るように傷を覆って留めてくれた。
 
「気にするな。私は——嫁に行くあてもないし、騎士が傷を負うのは当たり前のことだ」
 
「もう、ヴィオラまでそんなこと言って」
 
 マリエルが、小さな唇を心配そうに尖らせる。
 
 丸みを帯びた顔が、今はなんだか萎んでしまったようだ。彼女なりに、襲撃者に対して怒りを抱いているのが伝わってきた。
 
 嫁に行くあてもないし——とは言ったが、実際にはどうか分からない。
 
 アレクシス殿下は、間違いなく私を愛してくれている。私もまた、彼を愛している。