宣言するような、きっぱりとした口調だ。
「すでに王侯貴族の間では、不安の声が上がり始めています。襲撃事件が明るみに出るのも時間の問題でしょう」
確かに、すでに噂は尾ひれがついて出回り始めていた。王太子に恨みを持つ勢力がいるんじゃないかとか、次こそ命が危ないんじゃないかとか。
「お父上とお母上も、さぞかし心配でしょう。陛下……である以前に、ご両親を安心させて差し上げるためにも。そろそろ、ご決断をなさいませ」
エルディシア公爵が、うやうやしく両陛下の方を見遣る。なんと白々しい。結局は、娘を王家に入れたいだけだろうに。
「ん? ああ、そうだな。早く婚約しなさい」
ずっと黙っていた王が、思い出したように言った。具合が悪いのか、疲れたように背もたれに身を預けている。
「それもそうね。もうじき、ええと……二十五になるんだったかしら? さっさと結婚してしまいなさい」
王妃は王妃で、興味がなさそうだ。美しく磨かれた自分の爪に視線を落としている。アレクシス殿下は、次で二十三になるお歳だ。
「お聞きですか、王太子殿下」
エルディシア公爵の顔に、暗い笑みが広がった。
「もう、いつまでも遊んで暮らすわけには参りません。正式な婚約をしてくださいますな?」
アレクシス殿下は、乾き切った無表情をずっと貫いている。重い口を開いて、一言、吐き捨てるように言った。
「お望み通り、婚約はしよう」
その瞬間の、エルディシア公爵の歪んだ笑みときたら。まるで、極上の獲物でも捕えたような、剥き出しの欲望が満たされた顔だ。
「待っておりました! さあさあ、そうと決まれば、まもなくの誕生祭で正式な発表といたしましょう」
エルディシア公爵は揉み手をして、すこぶるご機嫌そうだ。
私はこっそりアレクシス殿下の顔を見ると、殿下はわずかに表情を緩め、小さく頷いた。
「もう十分だろう。皆、引き上げてよい。父上、母上もよろしいですね?」
一人浮かれた様子のエルディシア公爵をさらりと流して、アレクシス殿下がきっぱりと言う。
「私はこれから誕生祭の『準備』をしたい。しばらくの間、みな私のことは放っておいてくれ」
やや含みのある言い方で、アレクシス殿下は会議を閉会とした。

