私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 
 会議室にて。今回ばかりは皆、深刻そうな面持ちをしている。
 
 集まったのは王、王妃、宰相、大臣、警備担当の衛兵長、そしてエルディシア公爵だ。
 
「由々しき事態ですな。一度ならず、二度までもアレクシス王太子殿下が襲われるとは」
 
 いかめしい顔で、エルディシア公爵が全員に睨みを効かせる。ピリついた雰囲気なのは、公爵が場を支配しているからだろう。
 
「まあ、怪我もなかったし……ちゃんと犯人を調べればいいのではないの?」
 
 王妃は相変わらず、退屈そうにしている。
 
 息子への無関心には以前も唖然としたが、今ではある意味納得してしまう。アレクシス殿下はこうして、実の親からも大した関心を払われずに生きてきたのだ。
 
「殿下も殿下ですぞ。以前にも襲撃事件があったというのに、町外れの森の中などで、なにをなさっていたのか。それも——」
 
 ギロリと、公爵が私を睨みつける。その目には、ありったけの憎しみが込められていた。
 
「それも、こんな未婚の令嬢と一緒に。いくらなんでも、軽率すぎではごさいませんか?」
 
 エルディシア公爵の本意は分かる。勝手に城を抜け出したことに怒っているのではない。
 
 娘と——セリーヌ嬢と——結婚させるはずの殿下が、女と二人でいるのが気に入らないのだ。
 
「彼女は、私の側近だ。行き先に連れて行くのは当然だろう。それに、人に言えないようなことは何ひとつしていない」
 
 アレクシス殿下も、一切ひるまずに言い返す。私は、あのひとときが後ろめたくてうつむいてしまったが。
 
「私が森の中に女性を連れ込んで、後ろめたいことをしているなどと噂が立てば……困るのは、あなたの方では? エルディシア公爵」
 
 チクリと切り返すと、エルディシア公爵は顔を赤くして黙ってしまった。
 
 公爵が、娘を王家に入れようと躍起になっているのは、周知の事実だ。確かに、こんな噂が立っても嬉しくはないだろう。
 
「ま……まあとにかく、今回で、はっきりしたことがありますな」
 
 気を取り直したように、エルディシア公爵が慌てて言う。
 
「王太子殿下。もういい加減に、婚約をなさいませ。そして、早くお世継ぎを設けるのです」