私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 そのつもりがなくても、殿下が感情を爆発させるときには、それくらいの威力を伴ってしまう。
 
「あのまま感情のままに切りかかっていれば、あなたはきっと彼を殺めてしまっていたでしょう」
 
 アレクシス殿下が、襲撃者を殺害したいと思っていたはずがない。たとえ、自分を襲った相手であっても。
 
「あなたは、優しい人です。繊細で、寛容で、穏やかで……もしそうなればあなたは、いつまでも自分を責める」
 
 これ以上、殿下の悲しみを増やしたくなかった。
 
「ありがとう。つい、我を忘れてしまった……」
 
 アレクシス殿下は私を胸に抱いたまま、ゆっくりと背中を撫でてくれる。
 
「ヴィオラ。お前を失っていたらと思うと……」
 
 ぎゅっと、抱き締める腕に力が込められる。全身に、暖かい力が満ちてみなぎるようだった。
 
「もう、大丈夫だ」
 
 穏やかな、しかし力強い声。まるで、なにかを心に決めたようだった。
 
「これからは、なにがあってもオレがお前を守る」
 
 言葉が、温もりが、体から心に染み込んでいく。私は涙がこぼれないように目を閉じて、アレクシス殿下に身を委ねた。もう、抗えそうにもない。
 
 ああ——こんなにも、心地いいものなのか。愛する人に、抱き締められるというのは。