「ヴィオラ」
私の名を呼ぶアレクシス殿下の声が、細かく震えている。深く低い、それでいて問いかけるような。
「ずっと、お前のことばかり考えていた」
いつか言ってくれたのと、同じ言葉がまた耳に届く。はっきりと甘い、恋するような優しい声。
「忘れようとした。オレはお前のことを忘れなければならないのだと、必死で自分に言い聞かせた。いつものように。それが、王太子としての宿命なのだと」
体を起こし、二人とも草の上で脚を投げ出すように座った。地面からそのままひんやりした土の感触が伝わってくるのに、私の身体は火照っていく。
「ダメだった。いくらお前を諦めようとしても、いくらオレが、お前と結ばれることはないのだと自分に言い聞かせても、ダメだった」
「王太子殿下!」
咎めるように発したつもりの声は、ほとんど泣き濡れていた。お願いです。どうか、それ以上言わないで。
「私は……私は、剣に身を捧げた女。王太子殿下の……っ、愛には、お応え出来ません」
首筋が、目頭が、頭が、熱くなっていく。怖い。私の、本当の気持ちを抑えられなくなるのが怖い。
どうかこのまま、殿下のせいにさせてほしい。身分ある方との婚約が内定している王太子殿下の愛を、私が受け取るわけにはいかないのだと。
だって——だって私はこの方を、愛している。抑えようもなく。

