私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 身支度を整えながらも、さっきの光景が頭の中によみがえってくる。
 
 王太子殿下。それにしても、クセの強い人だった……。
 
 玉座に堂々と腰掛ける姿。威厳ある歩き方、男らしい髪の黒さに、炎のような瞳。王子らしい、恰好のよい容姿だ。
 
 手を(不本意ながら)握られて分かったが、持っている魔力の量も強さも相当なものだった。
 
 あの王太子殿下みずからが、私の率いる白百合騎士団を王属の団にと指名してくれたそうだが。
 
「もしや、女ばかりの団だから呼び寄せたのでは……」
 
 嫌な予想が頭をよぎって、私は思わず顔をしかめる。
 
 女ばかりの騎士団で軽く見られたことは、一度や二度ではない。
 
 剣を握る女が好奇の目で見られるのはよくあることだし、品のない視線を向けられることも多い。
 
 アレクシス王太子殿下。世間では勇猛果敢な凄腕の剣士だと名高いし、国民からの人気も高い。
 
 意地悪そうには見えなかったものの、初対面の私に対してあの態度だ。
 
 まさか……女ばかりの騎士団を手元に置いておきたい……なんて、下衆な好奇心から呼ばれたのだろうか。
 
 私たちはあくまで騎士だ。鑑賞物でも、王侯貴族の花嫁候補でもない。
 
 真意のほどは、王太子殿下に直接問いただすしかない。
 
 姿見に映った自分の顔を見て、ぴしゃりと頬を叩く。よし。仕事だ。
 
 王太子殿下とは、また謁見の間で落ち合うことになっている。
 
 「デートに付き合ってもらう」なんて言っていたが、まさかほんとうに遊びに出かけるわけではあるまい。
 
 もし。万が一、ほんとうに私を〝遊び相手〟として扱うようであれば、今後の身の振り方を考えなければ。
 
 腰に剣をたずさえ、姿見に背を向ける。部屋からの一歩とともに、私は新生活へ足を踏み出した。