「や、やった……私、の、勝ち……です……」
「まったく……なんて負けず嫌いだ……」
数え切れない再戦ののち。すっかり汗だくになって、砂と草にまみれ、ふたりして大の字に伸びてしまった。
いくら鍛えているとはいえ、素の体力と力で男性のアレクシス殿下に敵うわけがない。殿下はやや疲れが出てきた程度だが、私はもう息も絶え絶えだった。
「殿下……だって、人のこと……言えないでしょ……」
「まあ、そうだが……」
憎まれ口を叩きながら、ごろりと横になる。発熱したように火照った体に、短い草と地面がひんやりと気持ちが良い。
横向きになると、アレクシス殿下もこちらを向いていた。軽く息は乱れているが、私よりは余裕がありそうだ。
「ああ。久しぶりに、楽しく手合わせできた」
「私も、です」
「最近はヴィオラが構ってくれないから、オレは退屈だったぞ」
「退屈してる場合じゃ、ないでしょ」
徐々に、呼吸も落ち着いてきた。アレクシス殿下の拗ねたような口調がおかしくて、つい笑ってしまう。
「とんでもない。オレのやるべきことなんか、いくらもないぞ。暇だから、すっかり花を活けるのが上手くなってしまった」
「花を? 今ならちょうど、バラの時期ですね」
「ああ。オレは、アイリスの方が好みだけどな。華美というより、可憐で」
華美というより、可憐——可憐で美しいといえば、どうしてもセリーヌ嬢のことが頭に浮かぶ。
可憐な花の方が好みだと言われると、私の胸は鈍い痛みに疼いた。
私はまっすぐでしなやかなアイリスの葉の方が似つかわしいだろう。可憐で、愛らしい花ではなく。
この痛みを悟られたくなくて、私は話を変えた。
「初めて会った日のことを、覚えていらっしゃいますか」
「忘れるわけがない」

