私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


「くっ……!」
 
 よく知っている、殿下の受け止め方。とんでもなく強固で、こちらの腕が痺れてしまいそうな。
 
 コッ、コツンッ、カンッ。
 
 いつになく、アレクシス殿下は激しく攻め立ててくる。そうだ、この感じだ。手合わせをするときの殿下は、赤い瞳を怖いくらいに煌めかせて、激しい気迫をまとっているのだ。
 
 ガッ、カツンッ、ゴツッ。
 
 荒っぽい斬撃を、何度も何度も受け止める。次第に息が上がり始め、血がたぎった。少し変だ。殿下は、守りを徹底的に固める戦い方をする方だったはずだ。
 
「どうした、ヴィオラ。攻めてこい!」
 
 アレクシス殿下は警棒を振りかざしながら、激しい声を飛ばした。
 
 私も、私らしくない。とにかく、守りに徹した戦い方になってしまう。殿下の雨あられと繰り出される突きを、全て受けて、いなして、流して。
 
 私はいつだって、素早く突進して、一刻も早く相手の弱みを突く戦い方をしてきた。なのに、今は。
 
「ああっ!」
 
 一瞬気が緩んだ途端、私の警棒は手を離れてすっ飛んで行った。見事に、武装解除されてしまう。
 
「ええい! もう一回です!」
 
 悔しい。あんな雑な攻めに、弾かれてしまうなんて。女らしからぬ激しい口調で再戦を促すと、アレクシス殿下はニヤリと笑った。
 
「そうこなくっちゃ」
 
 形よい目が、ぱっちりと見開かれる。不敵に微笑んだ唇と、乱れた黒髪は、狩りを楽しむ狼を思わせた。