私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 
 馬車に揺られて辿り着いたのは、いつかよく一緒に過ごした森の中だった。
 
 以前——秋から冬にかけては、何度もここで手合わせをした。
 
 開けた場所は短い草が生えており、木々の間から陽の光が差している。とても気持ちのいい場所だ。
 
 よくあの開けた場所に寝転がって、互いに荒い息を整えたっけ。魔力を伴った斬撃が木を穿って、焦ったこともあった。
 
 初夏の草花は青々と生い茂って、風も心地がいい。この、アレクシス殿下のお気に入りの場所に初めて連れてきてもらったのは、かれこれ一年近く前になるのか。
 
 いったい、何を——? 口を開きかけた私に向かって、アレクシス殿下は腰に携えた警棒を一本、投げてよこす。
 
「行くぞ」
 
 ひゅっ、と空を裂く音がして、アレクシス殿下が警棒を構える。
 
 ばっちりと目が合った瞬間、私はあの頃——殿下と屈託なく交流していた頃——に、いとも簡単に引き戻された。
 
「来い!」
 
 アレクシス殿下が、吠えるように言う。私はほとんど何も考えずに、真っ直ぐに飛びかかった。体内で練った魔力を、素早く全身にまとわせて。