私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 砕けた口調の中に、探るような意思を感じる。ぐいっと身を乗り出して、私を見下ろす形になっていた。
 
「え? ええと、最初にお声かけくださった方と」
 
 そう答えると、アレクシス殿下はむーっと唇を尖らせた。美しい顔立ちと立派な装いが、その子供っぽい表情とあまりにもにつかわしくない。
 
「ふーん。なんでだよ。気に入ったのか?」
 
「いえ、そういうわけではなく……」
 
 誘ってくれた貴公子の誰かを、気に入ったから踊ろうと思った訳ではない。
 
 失礼な話だが、ほんのいっときの気を紛らわせるために、たまたまそこにいた殿方のお相手をしようと思ったのだ。
 
「へえ。じゃあ、なんで」
 
 アレクシス殿下は、また少し距離を縮めた。麗しい顔が近づいて、じっと私の答えを待っている。
 
 まさか、白状するわけにはいかない。あなたのお相手が私でないのが辛くて、現実逃避をしようとしました……だなんて。
 
「そ、それが……その、どうしても私と踊りたいと言ってくださるものだから、断り切れなくて。仕方なく……」
 
 ごめん、と、心の中であの殿方に謝る。
 
「で、ですから、アレクシス殿下に来ていただけて助かりました!」
 
「…………ふーん」
 
 しばらく考え込むような素振りを見せた後、アレクシス殿下はどうやら納得したようだった。
 
「……よかった。誰か、気に入った男がいたわけじゃないんだな」
 
 ほっとしたように言って、アレクシス殿下はふにゃりと眉を下げた。
 
「お前が他の男に取られたりしたら、どうしようかと思った」
 
 いったい、どういう意味だろう——考えるまでもない率直な言い方に、胸がドキドキしてくる。
 
「まあいい。よく見せてくれ、今夜のお前を」
 
 アレクシス殿下はそう言うと、私の頭のてっぺんから爪先までくまなく視線を注いだ。
 
 急に、今の自分の姿が恥ずかしく思えてしまう。
 
 真紅のドレスも、下ろした髪も、髪飾りも、どれも綺麗には仕上がっている。自分の容姿が嫌いなわけでもない。