思わず、頬が緩む。趣味のよい包装紙と留め具。セリーヌ嬢が、自ら包んでくださったのだろう。
「今日は、その……エルディシア公爵は——お父上は、ご一緒でないのですか?」
おそらく公爵はまだ城にいる。そして、セリーヌ嬢が私を訪ねることは、良く思わないだろう。
ここに怒鳴り込んで来られるのはまだいいが、あとでセリーヌ嬢が叱られるようなことは避けたい。父の名前を出すと、彼女の顔が明らかに強張った。
「これから、一緒に帰るところですわ。今は階下でわたくしをお待ちで……戻るのが遅くなると機嫌を損ねますから、急いでいますの」
そう言って、困ったようにうなだれる。愛らしいお顔を、申し訳なさにますます曇らせてしまった。
それにしても。父の名前を出しただけで、こうも表情が暗くなるなんて。日頃から、高圧的な接し方をされているのだろう。
バタバタしてごめんなさいと謝りながら、セリーヌ嬢は早々に帰っていかれた。何もかもが、完璧な貴婦人の立ち振る舞いだった。
頂いた包みを、そっと手のひらでくるむ。なんだか、ほっとした。セリーヌ嬢——彼女と会話を交わすのは、とても心地が良い。
愛らしくて、お優しくて。目の覚めるような美貌でありながら、ちっとも驕らないセリーヌ嬢。城で何度も顔を合わせるうちに、私は彼女のことが大好きになっていた。
セリーヌ嬢なら、まさにアレクシス殿下のお相手にふさわしい。もうじきに婚約に至るのだろう。
友人として、心からの祝福を——お二人が見つめ合う結婚式での姿が、ふと、脳裏に浮かぶ。
アレクシス殿下が——王妃となられるセリーヌ嬢を、優しく見詰める。そして、夫婦になるお二人を、私は護衛として遠くから眺めている——
この胸を、突き刺すような痛みが貫いた。

