私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 エルディシア公爵が、ギロリと私を睨みつけた。
 
「娘、ではない」
 
 アレクシス殿下が、ぴしゃりと言う。
 
「ヴィオラ・ブライアント卿。王属の白百合騎士団団長であり、私が信頼する側近だ」
 
 まるで、これ以上は何も言わせまいとするかのような気迫があった。途端に、空気がピリッと張り詰める。
 
 いつも穏やかなアレクシス殿下の変化に、エルディシア公爵は面食らったようだった。私を憎々しげに睨むが、それ以上はなにも言わなかった。

「なにをしていたか? 私用の買い物に護衛で付き添ってもらった。それだけだ。彼女を、軽く扱うのはやめてもらおう」
 
 大きな声ではないのに、広間中に響き渡るような迫力のある声だ。その場にいた者は全員、緊張して固まってしまった。
 
 エルディシア公爵は私を憎々しげに睨みつけたが、何も言わなかった。

「今日はもうよいだろう。おのおの、帰宅して構わない」
 
 アレクシス殿下は、うんざりした口調で言った。両親である王と王妃が関心を示していないのも、いつものことなのだろう。
 
「わたしの身辺は、警備を固めよう。信頼のおける者に、私室近くで護衛についてもらう」
 
 そう宣言しながら、殿下はちらりと私の方を見る。ずっと固まっていた表情が、かすかに緩むのが見えた。