私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません

大事なのは変わらない。
 
 とりあえず、アレクシス殿下は当分城の外を出ないこと・城の警備を強化することが決まった。
 
「まあ、とりあえずアレクシスはもうフラフラと出かけないように。では、わたくしはそろそろ失礼しますよ」
 
 殿下の母上である王妃は、退屈そうに言い放った。驚いて、その顔をまじまじと見てしまう。
 
 息子が襲撃されたというのに、まるで関心がなさそうだ。父上である王も、なんと体調が悪いとかでこの場に来ていない。
 
「こんなことがあっては、民の不安も高まりますな。いやはや、殿下には、賢明なご判断をしていただかなくては」
 
 公爵の言い方には、妙に含みがあった。いかにも、何か他のことを言いたげだ。
 
「陛下……お父上が、お体を悪くされてからずいぶん経ちます。その上で、このたびの事件。殿下も、そろそろ身を固める時期と言えましょう」
 
 アレクシス殿下は、凍りついたような無表情で沈黙を守っている。エルディシア公爵は、わざとらしい猫撫で声で言った。
 
「この機会に、正式な婚約の準備をなさいませ。まもなく、舞踏会がありますな。そのときには、我が娘を最初のダンスのお相手にどうぞ」
 
 要は——この機会に、さっさとうちの娘と結婚しろ。で、舞踏会では婚約の内定を——そう言いたいのだろう。
 
 確かに、王太子が襲われたとあっては、民は不安になる。現王の陛下がご病気なのも事実だ。
 
 だから早く結婚してお世継ぎを——という主張は、筋が通ってはいる。
 
 しかし、いくらなんでも、今それを言うのは無神経ではないか。アレクシス殿下は、得体の知れない者に襲撃を受けた直後なのに。
 
「考えておこう」
 
 アレクシス殿下が、いつになく硬い声で言う。私は、下を向いていた。このままでは、怒りをむき出しに睨みつけてしまう。
 
「それにしても……こんな娘を連れて、何をしておいでだったのです?」