私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 馬車に衝撃が走り、閃光とともに轟音が耳をつんざいた。ボキッ、と鈍い音がして、馬車全体ががたんと傾く。
 
 私は、即座に馬車の扉を蹴破った。外へ飛び出し、急いで状況を確認する。
 
 馬車の車輪が、歪んで壊れている。なんらかの魔道具で攻撃されたようだった。
 
 まがまがしい黒煙がもうもうと巻き上がり、視界が悪い。まさか放火が!? と警戒するが、この魔道具から放たれた煙幕のようだった。
 
 ——襲撃……! アレクシス殿下の乗った馬車を、襲った者がいる!
 
 腰に差した剣を抜き、辺りの様子を探る。神経が研ぎ澄まされていくのが分かる。命に換えても、殿下に近づけまい。
 
「騎士さま! あっちよ!」
 
 城下町の住民が、怯えたようにある方向を指差している。
 
 暗い石畳の道を、黒装束に身を包んだ何者かが素早く逃げていくところだった。