片腕では溢れるほどの、立派な花束が私のもとに残される。
急に愛の告白めいたことを言われても困惑するだけだが、王太子殿下がとても見目麗しいのは間違いない。
それもアレクシス殿下は、王太子にしてこの国でも最強の剣士だ。中には、本気になってしまう令嬢もいるのではないか。
大丈夫か、この王家。
数年前に私が興した、女性だけの騎士団——白百合騎士団——の功績を認め、王属に加えてくれたのはありがたい。
しかしその命を下した王太子殿下は、一癖も二癖もある人物のようだ。
大丈夫か、といえば、玉座の後ろ隣辺りにに空いた床の大穴も気になる。
城の中でも重要な、謁見の間。それも、玉座の近くだ。大人一人がすっぽり入れそうな、えぐれたような穴が空いている。
しかもよく見ると、穴の周りはご丁寧に小さな柵で囲ってあった。いったい、あれはなんなのだ。
「ヴィオラ嬢。この〝力の萌芽〟を拝見するのは、初めてであろう」
私の視線に気づいた宰相が、やたらと得意げに話し出す。なに、力の萌芽?
呆気に取られた私の顔をどう受け取ったのやら、宰相はいばって言う。
「アレクシス王太子殿下がまだほんの幼い頃……並外れた魔力と剣術をもって、堅牢なる城の床にすらこのような大穴を空けてしまったのだ」
勲章を見せびらかすようにふんぞり返っている宰相と、大穴……ええと、〝力の萌芽〟? とやらを、交互に見比べる。

