「……ああ。正直なところ、オレが女性に良い顔をすると、みな喜ぶから……それで、いかにも女好きのように振る舞ってしまう」
ちょっと恥ずかしそうな、バツの悪そうな言い方だ。そして、どこか寂しそうな。
「王家に近い者たちは、とにかくオレが世継ぎを設けることを強く期待しているからな」
ああ、やはり——
なるほど、合点がいった。初対面で、口説き文句を並べられたのも。サロンでもどこでも、たくさんの令嬢へ愛想を振り撒いているのも。
すべては、アレクシス殿下が「王太子として」望まれている姿を演じるためだ。本当の望みは、置き去りにして。
ああだこうだと悩んだ挙句、結局は、そのショーケースに収められた品物の中からしっくりくるブローチを選んだ。
「新たに作らなくていいのか?」
「ええ。これを、このブローチを気に入りましたから」
私が選んだのは、葉の意匠に青い魔石をあしらったブローチだった。深い色合いと、大人しいデザインが好みに合っている。
「うん。よく似合う。とても頑丈な素材だからな。獅子奮迅の女騎士が大立ち回りをしても、決して壊れないだろう」
私の胸元に、殿下自らがブローチを留めてくれた。舞踏会の装飾品には地味かもしれないが、私はこれがいい。
「ありがとうございます。いつまでも……大切にします」
胸に光るブローチを、そっと手のひらで抑えた。殿下が、幸せそうにそこへ視線を注いでいる。暖かい気持ちが、私の体中に満ちていった。

