「私のなにを、なにするですって?」
「装飾品だ。来月の末に、舞踏会があるだろう。そのときにヴィオラが身につける、ネックレスとかブレスレットとか」
「ぶ、舞踏会で、身につける……?」
盛大な舞踏会が来月にあることは、私も知っていた。しかしてっきり、護衛として任務にあたると思っていたのに。
「ドレスも新調するが、悪いがそれは既製品の中から選んでくれ……」
殿下は、なんだかものすごく申し訳なさそうにしている。いやいや、既製品をいただけるだけで十分ありがたいですが……。
しかし、他ならぬ王太子殿下の命令なら、ドレスを新たに作らせることくらい、訳ないのでは——とここまで考えて、はたと思い至る。
おそらく、公爵家の顔を立ててのことなのだ。もし他の令嬢のためにドレスを作らせたとあっては、きっとエルディシア公爵が黙っていないのだろう。
アレクシス殿下は、思ったよりもずっと多くの制約に縛られているのだ。
そう思うと、なんだかやり場のない苛立ちを覚えてしまう。
どうしてアレクシス殿下は、自由にドレスを新しく仕立てさせることすら出来ないのか。
アレクシス殿下はもちろん、セリーヌ嬢が悪いわけでもない。ただ、やり場のないもどかしさがうじうじと胸に巣喰った。
「しかしその分、装飾品くらいはお前のためだけにあつらえたい」
殿下は大きな手を私の肩に乗せ、優しく言った。がっしりした手のひらのぬくもりが、伝わってくる。
「それ……は……、ありがとうございます」
もったいない話だが、遠慮しても仕方がない。殿下は私に贈り物をしたいと思ってくださっているのだから、素直に受け取るのが筋だろう。
しかし、そうなると——

