私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません

 
「殿下、ごきげんよう。大事なご用ですか?」
 
 アレクシス殿下は、うちの団員たちにも人気らしい。殿下が来るとみな妙に嬉しそうで、私と話す姿に熱い視線が注がれている。
 
「ああ。他ならぬ、キミにしか頼めない用事があってね。悪いけど、付き合ってくれたまえ」
 
 とろけるような甘い瞳に、深い声。そのまま私の手を取りかねないような艶やかな振る舞いを見せる殿下に、私はいつも通り真面目に応答する。
 
「承知致しました。お供します。リーネ、あとは頼んだ」
 
 振り返って副団長のリーネに声をかけると、なにやらニヤニヤしている。
 
「いってらっしゃいっス、ヴィオラ団長〜。どうぞごゆっくり!」
 
 ごゆっくりもなにも、一応仕事なんだけどな。殿下はというと、相変わらず光るばかりの美顔を綻ばせている。
 
 妙に楽しそうな団員たちを背後に、私は殿下のあとをついて行った。
 
「そうそう! ゆっくり愛を育む……じゃなくて、お仕事頑張ってください!」
 
「今日のデート……じゃなかった、視察がどうだったか、今度教えてくださいね!」
 
 団員たちが何事か言っているようだが、風の音でよく聞こえない。一応、あとでなんだったのか聞いておこう。
 
 重要な仕事というのは、そう——アレクシス殿下の、気まぐれとも思えるお出掛けに付き従うことだった。

「まったく、今日こそは、本当に大事なご用事なんでしょうね?」
 
 演習場を出て、人目が少なくなってから、私は軽口を叩いた。
 
「なにを。オレが普段、しょうもない用事でお前をこき使ってるとでも?」
 
 アレクシス殿下が、怒るフリをしながら軽口で返す。子供っぽい口ぶりに、思わず笑ってしまった。