「どうした?」
「い、いえ! なんでもありません」
意識しているのは私だけだ。ドキドキしてしまったのを悟られたくなくて、わざと勇ましい声で返答する。
「わ……私はまだやれますよ。もう一戦どうですか?」
ガバッと、勢いよく立ち上がる。その途端、ふっと気の遠くなるような感覚に襲われて、体の力が抜けた。
「おっ、と」
次の瞬間、私は殿下のたくましい腕に抱き留められていた。頬を寄せる形になった胸は途方もなく分厚く、ついさっきまでの激しい手合わせで汗に湿っている。
何より私を動揺させたのは、極めて男性的な——これまで触れたことのない、男らしい気配そのものだった。
「し……失礼しました!」
「おいこら、大人しくしてろ」
慌てて飛び退こうとするが、アレクシス殿下は私を捕まえて離してくれない。太い腕の力強さに、ますます焦りがつのる。
「ちょ、ちょっと立ちくらみがしただけです! 平気ですから……」
焦れば焦るほど、殿下はむしろ心配そうにがしっと私の体を抱いた。そのまま膝の裏から、掬い上げるように横抱きされる。
「いくら強くても女の子なんだから、無理するな」
すぐ近くで、アレクシス殿下の低い声が聞こえる。何気なく、サラッと言っただけの台詞だった。

