私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 振り返ってアレクシス殿下に声をかけると、ちょうど重いマントを脱いでバサッと投げ捨てたところだった。
 
「本気のお前とやってみたいと、言っただろう」
 
 アレクシス殿下は上衣も脱いで、背後へ豪快に投げ捨てた。この時期にはやや寒そうな、薄手のシャツと細身のズボン姿になる。
 
「来い、ヴィオラ」
 
 挑むように言うと、アレクシス殿下は鋭く光る赤い瞳をまっすぐに私へ向け、腰に差した剣を抜いた。
 
「お前も、オレの前では全てを晒け出せ」
 
「……帰らせてもらいます」
 
 くるっと方向転換すると、アレクシス殿下は大慌てで追ってきた。
 
「いや違……悪かったって!」
 
 慌てふためく様子がおかしくて、けらけら笑った。向き直ると、アレクシス殿下はバツの悪そうな顔でこっちの様子を伺っていた。
 
「冗談ですよ。本気を出せってことでしょう?」
 
 ああ、それでわざわざこんなところに連れて来たのか。すんなり合点がいって、ワクワクしてくる。
 
 私は素早く上衣を脱ぎ、脇に投げ捨てた。シャツの上には、ちょうど皮の胴着を着けていた。
 
 刃を潰してある訓練用の剣を引き抜くと、アレクシス殿下はニヤリと笑った。
 
 ピンと張り詰めた空気の中。ざあっ、と、草木のそよぐ音だけが遠く聞こえた。
 
 魔力を練り、全身にまとわせる。次の瞬間駆け出して、一撃を見舞う。ちらりと見えたアレクシス殿下の眼差しは、炎のようにギラついていた。