私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


「三十人の騎士が太刀打ち出来なかった群れをオレが一掃した、なんてのは明らかな言い過ぎだ」
 
 肯定も否定もせず、私は黙って聴いた。
 
「この〝嘘っぱち〟は、王侯貴族の間でどんどん大袈裟に広められた。オレが王位を継げば都合の良い連中は、オレを英雄に仕立て上げたいからだ」
 
 この有名な武勇伝は、語り手によって微妙に詳細が違う。三十人の騎士が二十人だったり、王太子殿下は怪我をおして戦ったということになっていたりする。
 
 多少尾ひれがついているのだろうとは思っていたが、そういうことだったのか。
 
「そんなのばっかりさ、オレの評判なんて」
 
 ふ……と、諦めたような笑みが、薄闇の中に消えていく。穏やかな様子のアレクシス殿下を前に、私は静かに衝撃を受けていた。
 
「失望しただろう? アレクシス王太子殿下は、世間が思うような英雄ではない」
 
「うーん……確かに、少し失望したかもしれません」
 
 首を捻りながら言うと、アレクシス殿下の表情がわずかに硬くなる。誤解を与えないように、私は慌てて言った。