「喧嘩が出来るような間柄ではなかった。王も王妃も、その側近たちも——オレが王家にとって、役に立つかどうかしか興味はない」
あまりに淡々と語るアレクシス殿下は、相変わらず穏やかな表情を崩さない。
「オレの行動が王家にとって都合が悪ければ隠し、都合が良ければ大袈裟に宣伝する。それだけだ」
確かに、アレクシス殿下にまつわるエピソードは、華々しいものばかりだった。それは、王家の栄華のため、過剰に持ち上げられているのだろうか。
「そ……それは……」
気の利いた言葉が出ない。
当たり前のように話すアレクシス殿下の口調は、それをすっかり受け入れているかのようだった。
「今日、オレの〝武勇伝〟とやらを聞いただろう?」
「ええ……三十人の騎士が太刀打ち出来なかった魔獣の群れを、一人で討伐したと」
この出来事は、王侯貴族や騎士たちの間で広く語り継がれている。これでアレクシス殿下に憧れて、剣士を志す若者も少なくない。
「あんなのは、大袈裟な武勇伝として仕立て上げられただけだ。ほとんど嘘っぱちだと言ってもいい」
殿下は、その出来事の真相を語り始めた。
その日、王都の外れで、増加していた魔獣の群れが暴れ出していた。駆けつけた騎士団員は初め数名で討伐に当たったが、かなりの苦戦を強いられたという。
たまたまそのとき動ける騎士団の連携がうまく取れておらず、戦いはズルズルと長引いた。
最終的には、総勢三十人ほどの騎士や魔術師が動員された。そして魔獣の群れもだいぶ弱ってきたところで、アレクシス殿下も参戦したのだという。
「確かに、最終的に制圧したのはオレだ。それにまあ、自分で言うのもなんだが、剣の腕も悪くないし活躍したのは間違いない。しかし……」
ははっ、と、自嘲気味に笑って肩をすくめる。

