私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません

 
「殿方が裁縫をお好みになるのは珍しいですが、許されないことではありませんよ。私だって、女だてらに剣を振り回しています」
 
 殿下は、静かに耳をかたむけてくれる。なんだか距離が縮まったような気がして、勝手にしゃべり続けた。
 
 私は幼い頃、ごく普通の伯爵令嬢だったこと。六つのときに剣術にハマり、夢中になったこと。
 
「もう怪我が絶えなくって……暇さえあれば木刀を振り回して、みんなの手を焼きました」
 
 私を騎士の道に進ませたい父と、淑女でいてほしい母の間で、ちょっとした小競り合いがあったこと。
 
「母はずっと反対していましたが、同時に誇りにも思ってくれました。騎士を志す少女を集めて自衛団を始めたときは、怒りながらも感心していましたよ」
 
 いまだにしょっちゅう手紙を送ってよこす母は、とにかく私が心配だったのだ。怪我をするたびに叱られたが、それは私が傷つくのが怖かったのだろう。
 
「年頃になると、もう屋敷中がひっくり返るような大喧嘩になって……でも結局は、泣きながらも騎士団長として送り出してくれました」
 
 壮大な親子喧嘩に勝利したときの話を終える頃には、アレクシス殿下はすっかりくつろいだ顔色になっていた。
 
「お前は……本当に、変なやつだな」
 
「そんなの、お互い様じゃないですか」
 
 軽口を叩くと、殿下は嬉しそうに笑った。思わず、ドキッとする。
 
 サロンの間中、令嬢たちに振りまいていたのとは、まるで違う笑顔だったからだ。まさに少年のような、力の抜けた、心からの笑顔。
 
 ドキッとしたのは、そんなアレクシス殿下を可愛らしいと思ってしまったからだった。
 
「殿下の方は、どうなんです? 年頃になると、王族の方でも親子喧嘩のひとつでもなさるのではありませんか?」
 
「親子喧嘩など、したことないな」
 
「え」