遠慮がちに話し始めたセリーヌ嬢の顔が、花の萎んだように曇る。
「父が、あなたにとてもイヤな態度をとりましたこと……わたくし、ずっと恥ずかしくて。お詫び申し上げますわ」
セリーヌ嬢はなんと、私に向かって頭を下げてしまった。私が、慌てて彼女を制する。
「お顔をお上げください、セリーヌ様! あなたにはなんの罪もありません」
しおらしく謝るセリーヌ嬢の姿に、ウソや打算があるようにはどうしても見えなかった。次期王妃となられるような方だろうに、なんて控えめな方だろう。
「あなた様が気に病むことではありませんとも。確かにエルディシア公爵閣下は失礼ですが……あっ」
しまった。また口が滑った。いくら本当のことでも、娘であるセリーヌ嬢に向かって、父親のエルディシア公爵をストレートに「失礼」と言うなんて。
「まあ。うふふ。その通りですわ」
セリーヌ嬢はむしろ、おかしそうに微笑んだ。きらめくような笑みが、ふんわりと彼女の麗しい顔を彩る。
本当に、可愛らしい人だな。このほんの短い会話でも、ついついセリーヌ嬢に惹かれてしまう自分がいる。
見た目はもちろんのこと、話し方も、気配りも、おっとりした優しさに満ちている。
「……こんな風に、ついバカ正直に気持ちが口をついて出てしまうたちでして」
女にしては長身な私を、小柄なセリーヌ嬢は小首を傾げて見上げている。こんな令嬢に見詰められたら、殿方はたまらないだろうなと思う。
「今後、お城でお会いする機会もありましょう。失礼があるかもしれませんが、どうぞお目こぼしください」
するすると、思ったことが口をついて出てくる。セリーヌ嬢には、なぜか自然と心を開いてしまう。
「まあ! 歓迎ですわ。どうぞわたくしとも、仲良くしてくださいませ」
セリーヌ嬢はむしろ、嬉しそうに応えてくれた。ぱっと咲いた笑顔が、可憐な花のようだった。
その後も、サロン自体はつつがなく進行した。セリーヌ嬢は忙しくあちこちに気を配っておられたし、アレクシス殿下はずっと愛想を振り撒いていた。
閉会後の出来事がなければ、私はさぞ穏やかな気持ちで一日を締めくくれただろう。

