私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 しぶしぶといった様子で、令嬢たちは席を譲った。セリーヌ嬢は礼を言いながら、控えめな面持ちで席につく。
 
 エルディシア公爵家の権力は、貴族の誰もが知るところだ。不本意でもなんでも、みな一目置いている。
 
 特に、公爵家当主——あの感じの悪い男——が、娘のセリーヌ嬢を、アレクシス殿下に当てがおうとしているのは、有名な話なのだろう。
 
 並んで席につくアレクシス殿下とセリーヌ嬢は、まったくもってお似合いの二人だ。美男美女同士、隣り合っているだけで絵になる。
 
 和やかに会話を交わす二人を眺めていると、セリーヌ嬢が優雅な仕草でまっすぐに私を見詰めた。
 
 彼女はアレクシス殿下に一礼し、上品に立ち上がる。そして、滑るような動作で、私の方へ歩み寄ってきた。
 
「ごきげんよう。ヴィオラさま……で、いらっしゃいますね」
 
 騎士の礼で、彼女を迎える。静かな、それでいてよく聴こえる、澄んだ声だ。優しい眼差しが、リーネにも向けられる。
 
「こちらのお方は……」
 
「はっ。わたくしが率いる白百合騎士団の副団長、リーネ・クロイツェルと申すものです。ご挨拶を」
 
 私が促すと、リーネは目をまんまるくしてカチンと緊張した。公爵家の人間と話すのは、初めてかもしれない。
 
「はっ、はいっ! リーネ・クロイツェルといいます、お嬢さま。よろしくお願いします」
 
「まあ。お楽になさって」
 
 セリーヌ嬢はこの上なく優美に微笑みながら、リーネの緊張を和らげようとしてくれる。どこからどう見ても、溜め息の出るような淑女だ。
 
「ヴィオラさま。わたくし、あなたに謝りたいことがございますの」