私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 尊敬と憧れの眼差しを一身に受けながら、アレクシス殿下は完璧な微笑を浮かべていた。
 
「大したことはないさ。しかし、キミたちのような美しい女性の応援があれば、もっと頑張れただろうに」
 
 令嬢たちの間から、うっとりした溜め息が聞こえる。無差別に愛想を振りまいているようだ。
 
 ……なんだか、見ていてムズムズする。
 
 アレクシス殿下が、あまりにも「チャーミングな王子様」過ぎるのだ。常に微笑んでいて、動作も優雅で、甘い声で甘い言葉を囁いて。
 
 私と話しているときにふと見せていた少年らしさやスキが、まるでない。
 
 アレクシス殿下は女性が苦手、とまではいかないが、やや奥手な男性なのだろうなと感じていた。だからこそ、こうして誰にでも愛想を振り撒いているのだろう。
 
「ごきげんよう、アレクシス殿下。おいでくださって、嬉しいですわ」
 
 そこへ、主役であるセリーヌ嬢が挨拶に見えた。艶やかに波打つ金髪に、深いグリーンのドレスがあまりに似合っている。
 
 光が差したような麗しさに、驚くほどだった。父であるエルディシア公爵がいないと、こんなにものびやかな面持ちで過ごされるのか。
 
「ご挨拶が遅くなって、申し訳ございません。不慣れで、お恥ずかしいですわ」
 
 無理もない。主催したセリーヌ嬢自らが、備品の配置やゲストの案内をさっきまで行っておられたのだ。家来の制止を上品に断って。

「とんでもない。ごきげんよう、セリーヌ嬢。こちらこそ、呼んでくれてありがとう」
 
 アレクシス殿下は立ち上がって、心なしか明るい声で応えた。殿下の周りにいた令嬢たちが、セリーヌ嬢を恨みがましく睨む。