私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません

 
 王太子殿下、宰相、衛兵たちがずらりと並んだ玉座の間は、静まり返っていた。
 
 王太子殿下の歩みを、皆が静かに見定めている。かたわらのテーブルにあった花束をつかむと、ふわりと私の腕に預ける王太子殿下。
 
「ブライアント卿……いや、ヴィオラ嬢。よく来てくれた」
 
 深く優しい、甘い声色。煌めく瞳の、燃えるような紅色。豪華な花束も伴って、それはまるで恋人に向けるまなざしのようだ。
 
 混乱して周囲を見わたすが、宰相も衛兵たちも何事もなかったかのように平然としている。

「今日からキミには、わたしだけの騎士になって欲しい」
 
 王太子殿下は、あふれるような笑みを湛えたまま囁く。
 
 見上げるようながっしりした体を軍服に包み、これまた大きな手で私の手を握った。
 
「キミは実に美しい……わたしのそばにおいておかないと、誰かにとられてしまうな」
 
 私をじっと見つめる瞳は、ルビーのように紅く情熱的だ。
 
 狼を思わせる豊かな黒髪が、見るも涼しげな眉の辺りにはらりとかかっていた。
 
 えっ、いや、あの。
 
 誰が見ても、精悍でりりしい美男子なのは分かる。分かる、が。

「な……いえ。私は、王城に魔法騎士団を新設するからという命で参った身です」