「今度、これが王城でサロンを開かせてもらう予定でして。どうぞ、いらしてください」
エルディシア公爵が、顎で娘の方を指し示す。
「お裁縫や音楽を楽しむ場に出来たらと思っております。殿方には退屈かもしれませんが……」
セリーヌ嬢が、おずおずと切り出した。控えめな口ぶりで、父親の態度を気にしているようだ。
「とんでもない。わたしも伺うよ」
アレクシス殿下は、セリーヌ嬢に優しく笑いかけた。セリーヌ嬢が、ぎこちなく微笑む。
「必ずいらしてください。他の女などと会うより、有意義な時間になることでしょう」
ぐいぐいと、エルディシア公爵が割って入るように声をあげる。
とたんに、セリーヌ嬢はまた黙ってうつむき気味になってしまった。
「我が娘、セリーヌの価値の高さを分かってもらえるはずですぞ。しっかり娘の品定めをして頂いたら、いよいよ結婚のことも考えて頂きませんと」
なんて言い草だ。王太子殿下の前でなければ、私は口出ししていただろう。
しかし——主である王太子殿下が黙って聞いている以上、私が出しゃばるわけにはいかない。
エルディシア公爵は、その後もベラベラ好き勝手しゃべり倒した。
娘の「商品価値」の高さを誇ったり、まだ婚約に至らないアレクシス殿下へ遠回しに説教したり。
何を言われても、アレクシス殿下は礼儀正しい微笑みは崩さなかった。殿下なりの処世術なのだろう。
アレクシス殿下は、私をサロンの護衛としてつけるつもりだと紹介してくれた。が、公爵は聞いちゃいない。
私の存在は、空気のように無視されたままだった。まあいい。そういう人なのだろう。

