私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


「キレイだ」と言う口ぶりは、女の肌というよりむしろ——精巧な金細工を眺めるような調子だ。
 
 アレクシス殿下は、私の肌に流れる魔力をじっくり観察している。真面目な横顔が、なんとも凛々しい。
 
 思わず、少しだけドキッとしてしまった。表情から、私の能力に心から関心を抱いているのが伝わってくる。
 
 これまで、女だからと軽んじられることも、下衆な好奇心を向けられることも、数え切れないほどあった。
 
 しかしこんな風に、純粋に騎士としての私の在り方に関心と敬意を寄せられるのは初めてだ。
 
「ううむ。素晴らしい技術だ。ぜひとも、本気のお前と一戦やってみたい」
 
「私も、本気の殿下とお手合わせ願いたいものです」
 
「油断は出来ないな。パワーに頼っても、簡単には勝てなさそうだ……」
 
 私の肌をくまなく調べているアレクシス殿下が、思慮深げに唸る。どうやら、戦略を練っているようだった。
 
 そして不意に——夢中になって私の腕を触るアレクシス殿下と、バチンと目が合った。赤い瞳が、目を覚ましたようにぱちくりする。
 
「……わ、悪い」
 
 アレクシス殿下が、さっと手を離す。うろたえているようでもあり、戸惑っているようでもあった。
 
「さすがに、肌に触るのはやりすぎた」
 
 ふいと逸らした顔は、みるみるうちにカーッと紅潮していく。端正で勇ましい顔立ちが、まるで台無しだ。
 
「て、照れないでください。気まずいでしょう」
 
 予想外にウブな反応に、私まで戸惑ってしまう。むしろ、ちょっと可愛らしい一面もあるんだなと思ってしまった。
 
「す、すまん」
 
 照れたように笑う表情は、実に屈託ない。てっきり、女の肌に触れることくらい、日常茶飯事だと思っていたのに。
 
「いやその、女性と二人きりで過ごす機会なんて、めったにないからな……」
 
「えっ。先日も、未婚の令嬢と二人きりで密会したんじゃないんですか?」
 
「いやいや、あれは、話に尾ひれがついて広まっただけだ」