私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 努めて優しく声をかけると、アレクシス殿下がパッと顔を上げる。私は鎧を外し、薄手の長袖をまくって留めた。
 
「構いませんよ。ごらんください」
 
 意識を集中させ、体内の魔力を練り上げる。あらわになった腕から肩に魔力をまとわせると、力がみなぎってきた。
 
 私は数歩前に出て、書斎机に立てかけてあるサーベルを手に取った。
 
「体内に発生する魔力を、精神力によって練り上げ——筋肉や関節にまとわせて……」
 
 女の細腕では持ち上げるのも困難であろうサーベルを、天を突くようにまっすぐに振り上げる。
 
「身体を内から補強することで、パワーやスピードに変換します」
 
 ひゅうんっ、と空を裂く音と共に振り下ろし、私はサーベルを水平にぴたりと止めた。その軌道を、アレクシス殿下は目を輝かせて追う。
 
「おおっ!」
 
 私の体内から湧き出た魔力が、肩、腕、関節、手首、指先までを覆って微かに光っている。
 
 アレクシス殿下がどれくらい魔術の訓練を積んでいるかは分からないが、この繊細な魔力の糸のひと筋ひと筋は見えているようだ。
 
「最重量クラスのサーベルだぞ。こんな軽々と……」
 
 どんな訓練をしたのだ? いつ頃から魔力を使い始めた? 使いすぎると体に負担が? どれくらい強化できるのだ?
 
 アレクシス殿下は、はしゃいだように次々と質問を投げかけてくる。それぞれに答えるたびに、殿下は嬉しそうに感嘆した。
 
「触れてもいいか?」
 
 伸ばした私の腕に、アレクシス殿下がそっと触れる。エネルギーに満ちた魔力の暖かさを味わうように、殿下はそっと手のひらを滑らせた。
 
「強い。とてもキレイだ」
 
 私の肌をそっと撫でるアレクシス殿下の手つきは、とても優しい。剣を握って硬くなっているが、私の皮膚を傷つけないように気をつけてくれている。