私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 食後のハーブティーを飲みながら、マリエルがくつろいだ様子で話を向ける。
 
「まだ、王太子殿下と顔合わせをしただけだ。明日改めて、ここですべきことをお聞きする予定だ」
 
「まあ。王太子殿下が、じきじきに教えてくださるのね」
 
 マリエルが、感心したように言う。そしてすぐに、声をひそめて囁いた。
 
「……それで、大丈夫だった? 王太子さまと、一緒にいて」
 
「? 大丈夫、とは?」
 
 マリエルは、心配そうな様子だ。なんのことか分からず、私は首をかしげる。
 
「その……アレクシスさまは、たいそう女好きだってお聞きするから。もしかしたら、なにかされてやしないかって気になって」
 
 おいおい。社交界どころか、城の使用人たちの間でも話題になるほどなのか。
 
 軍事国家であるグラディア王国においては、アレクシス王太子殿下の武勇伝は広く伝えられている。
 
 多くの魔法騎士を輩出するブライアント家の人間としても、王太子殿下のウワサはいやでも耳に入っていた。
 
 凄腕の剣術使いだとか、豪快な戦いぶりだとか、圧倒的な力を誇るとか。
 
 整った容姿も合わせて、魅力的な人物として語られることは多い。
 
 結局それらは、女好きなふるまいを遠回しに表現したものだったのだろうか。
 
「たいしたことはないが、花束を渡されたよ」
 
 さっき部屋で活けてきた花のことを思い出す。言っては失礼だが、王太子殿下の腕には似合わない可憐な花束だった。
 
 全体のボリュームも色合いも、まとまりを考えて作られたよい品だ。花を部屋に飾れること自体は、素直に嬉しかった。
 
「それが、なかなか趣味が良いんだ。誰があつらえた花束なのか知らないが……」
 
 王宮の庭師か花屋が作ってくれたのだろうが、ご苦労なことだ。
 
 王太子が女性にいい顔をするたびに、ああして花束を作らされているのだろう。