私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 王太子、アレクシス・ヴァルスタイン。
 
 軍事国家であるここグラディエ王国において、アレクシス王太子殿下はまさに象徴的な存在としてその名を轟かせていた。
 
 勇猛にして豪快、国一番の剣士。力や技だけではなく魔力量にも優れ、将軍も顔負けの強さを誇るという。
 
 その腕前は、なかば伝説的に語り継がれている。一流の魔法騎士が二十人かかっても手を焼いた魔獣の群れを、たった一人で討伐してしまったそうだ。
 
 そんなアレクシス王太子殿下から、私は直々に招集を受けていた。乙女ばかりの騎士団、白百合騎士団の団長として。
 
「ヴィオラ・ブライアントと申します。この度はお呼び立てくださり、恐悦至極にございます」
 
 謁見の間は、しんと静まり返っていた。
 
 私は仕立てたばかりの騎士の服に身を包み、緊張気味に口を開く。
 
 騎士の礼をしようと脚を一歩引いた瞬間、彼が手を挙げて私がひざまずくのを制する。
 
「よい。そのままで」
 
 玉座にゆったりと腰を下ろしていたお方——アレクシス・ヴァルスタイン王太子その人が、立ち上がって優雅にこちらに向かってくる。
 
「……?」