私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 
 城の使用人や兵士たちでいっぱいの大食堂は、とても賑やかだ。
 
 ずらりと並んだ長卓に、たくさんの椅子。おしゃべりしながら食事する者たち、料理を取りに行く者たち、ひとりで一心不乱に食べている者もいる。
 
 本来なら私は、貴族の来賓が使う晩餐の間で食事を摂ってもいいはずだ。だがあそこは、どうも性に合わない。
 
 木のお盆を持って、皿を取り、長机に並べられたたくさんの料理を見る。いくつもある鍋には、ほかほかと湯気を立てた煮込みやスープがあった。
 
「どうぞ〜。今日のお豆と野菜の煮込み、美味しいですよ〜」
 
 食堂係の娘が、鍋の下で火の魔法を操りながら声をかけてくれた。
 
 煮込んだ豆と野菜、干し肉やチーズ、パン。いつもよりは少なめに盛って、空いている席に向かった。
 
 すれ違った、食堂係の娘——彼女は、魔法で生成した飲み水をボトルに注いでいた——が、私の皿を二度見する。貴族の令嬢にしては、多すぎると思ったのだろう。
 
 一日のうち長い時間を、鍛錬や任務で体を動かしているのだ。食事は——特に肉類は、しっかり摂らないと身が保たない。
 
「ヴィオラ! ヴィオラね!」
 
 椅子に座った瞬間、懐かしい声が後ろから聞こえた。振り返ると、幼馴染みのマリエルが駆け寄ってくるところだった。
 
「マリエル!」
 
 大きい声が出てしまった。マリエルは我がブライアント家の使用人の娘で、乳姉妹でもある。
 
 使用人が使う食堂を選んだのは、マリエルに会いたかったからだ。事前に手紙で、夜はここで食事をとると聞いていたのだ。
 
 彼女は、二年前からこの城で使用人として働き始めた。私が白百合騎士団を結成して二年になる頃。多忙を極めた時期だった。
 
「マリエル……! 元気だったか?」
 
 彼女は返事をする代わりに、私の腕の中に飛び込んできた。ぎゅっと抱きつかれると、暖かい気持ちが溢れ出す。
 
「元気よ。ヴィオラったら……立派になったのに、変わらないのね」
 
 目を潤ませるマリエルの、懐かしい姿を確かめる。栗色の髪をおさげにしているのも、愛らしいそばかすも、まあるくピンクになった頬も、昔のままだ。
 
「マリエルこそ」
 
 食事をしながら、互いの近況を盛んに話し合った。たずねられるままに、この二年間で起こったことを話し続けた。
 
「今日は、どんなお仕事をしたの?」