私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 王太子殿下が、私をじっと見ている。珍しいものを見るような、面白がるような顔だ。
 
「はい。ええと……申し訳ございません」
 
「ん? なにがだ?」
 
 しまった! また、やってしまった。
 
「なんというか、思ったことがすぐ言葉や顔に出てしまうたちでして……お恥ずかしいのですが、お世辞や方便も使えません」
 
 私の悪いクセだ。良くいえば正直、悪くいえばバカ正直。
 
 嫌なことは嫌、ダメなことはダメ。と、いつでも率直に言葉や態度に出てしまう。
 
 もちろんそれが重要な場面もあるのだが、ついポロッと出てしまうのだから始末が悪い。
 
「そのようだな。エルディシア公爵が気難しいのは周知の事実だが、それをハッキリ口にする者はいない」
 
 王太子殿下は、イタズラを企む少年のようにニヤリと笑った。
 
「し、失礼いたしました」
 
「いいさ。面白い女性だな」
 
 怒っているわけではない。私の非礼を咎めたわけでもない。ただ、面白がっているらしい。
 
「そ、それで! なぜ私を……白百合騎士団を王属に迎えてくださったのか。教えていただけますね?」
 
 慌てて話を変えると、王太子殿下はすっと背筋を伸ばした。初めに会ったときより、ずいぶんと表情が豊かだ。
 
「ああ。いいだろう」
 
 ここグラディア王国は、軍事国家だ。といっても大きな戦乱はしばらくなく、紛争の火種も少ない平和な時代。
 
 建国戦争の折には軍事力の高さを誇ったグラディア王国の騎士団だったが、これからは戦闘力を平和利用に活かしたい。
 
 中でも、魔力を身体の強化に利用した騎士団は、王侯貴族のあいだでも注目を集めていた。白百合騎士団は、その筆頭だ。
 
 魔力を使えば、力の弱い女や中年期に差し掛かった者でも騎士として働ける。魔力のコントロールができるなら、応用もきく。
 
 そういうわけで、従来の剣術と男の筋力だけで成り立っていた騎士団だけでなく、新しいやり方で力をつけてきた新興の騎士団を起用したい。
 
 そんな思いで、王太子殿下が自ら白百合騎士団を指名した——と、殿下は順を追って語ってくれた。
 
「女性だから、というのは、あながち嘘ではないのだ」
 
「なるほど」