「疲れただろう?」
「ええ、少し」
思えば、ずいぶん肩に力が入ってしまっている。意識して深呼吸すると、少しリラックスできた。
アレクシスが私の肩を抱いて、私は彼にもたれかかる。二人で夜空を見上げていると、甘い酔いが胸の中を駆け巡った。
「婚礼の儀が終わったら、しばらくは二人でゆっくりしよう。それまでは少し、挨拶回りで忙しくなる」
「頑張ります」
「無理はしなくていい」
アレクシスが、いたわるように私の肩を撫でた。私の緊張を、感じ取ったのだろう。
次期王妃として公的に人と接するのは、今日が初めてだった。誰もが表面上は愛想よくしながらも、品定めしているような気配は感じていた。
「これからは私も、馬鹿正直になんでも思ったことを口に出すわけにはいきませんね」
「え? なぜだ?」
それがお前の良いところなのに、と、アレクシスが首を傾げる。
「私もこれからは、多少は〝国が望む王妃〟としての振る舞いを民に見せなければならないでしょう。あなたがそうだったように」
有能な王属騎士団の総司令官であれ。同時に妻として王を支え、世継ぎを産め。世間はきっと、私にこんな期待を寄せるだろう。

