私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


「……綺麗だ」
 
 しばらくじっくりと私の姿を眺めたあと、アレクシスはただこれきりをほろりと呟いた。
 
 このたった一言に、全ての想いが詰まっていて……胸がいっぱいになってしまう。
 
「このブローチが、苦い恋の思い出にならなくてよかった」
 
 私は、胸に留めた美しいブローチをそっと手のひらで包んで言った。
 
 アレクシスと結ばれることはないだろうと諦めていたあの時期。このブローチを、報われなかった愛の名残りとして生涯大切にしようと覚悟を決めていた。
 
 今となっては、それも良い思い出だ。
 
 このブローチは、私たちが互いに恋を意識し始めた記念の品になるのだろう。
 
「これからは、ブローチでもドレスでも、なんでも好きなだけ贈れるな」
 
 私の頬に手を添えて、アレクシスが愛しげに言う。
 
「そんなにたくさんの贈り物は要りません。あなたのそばにいられればそれで良い」
 
 素直な気持ちをこぼすと、アレクシスはふふっと笑った。
 
「そう言うと思ったよ」
 
 少しの間、穏やかな沈黙が流れる。夜が始まったばかりの空気はひんやりして、私たちを祝福するように馨しかった。