私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


「なんだか、懐かしいです」
 
「そうだな」
 
 春の盛りに開かれた舞踏会の日。あの夜も、私はアレクシスと二人でここにいた。
 
 小さなガーデンテーブルとガーデンチェアのあるこのバルコニーからは、庭が見渡せる。
 
 星がきらめく夜空を、私は実に清々しい気持ちで見上げた。秋の澄み切った空気が、心地よく頬を撫でる。
 
「こっちに来いよ」
 
 アレクシスが、さっと私の肩を抱いた。そのまま、彼の広い胸の中に閉じ込められる。
 
 ああ、やっと——やっとのことで、なんの後ろめたさもなく、この胸にもたれかかることができる。
 
 たくましい腕に抱かれていると、色々なことを思い出す。以前このバルコニーで逢ったときは、こんな豊かな気持ちではいられなかった。
 
 人目を忍び、自分の気持ちも押し殺して彼と向かい合っていたのだから。
 
 顔を上げると、アレクシスが微笑んで頬を寄せてきた。どちらからともなく、口づけを交わす。
 
「よく見せてくれ。今夜の、オレだけのお姫さまの艶姿を」
 
 私はつい目を伏せながらも、アレクシスの視線が全身に注がれるのを幸福に感じた。
 
 象牙色のドレスには、鮮やかな青の刺繍が散りばめられている。白い長手袋は着け慣れないが、胸に留めた青い魔石のブローチはしっくり馴染んでいた。