私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


「大丈夫だ」
 
 緊張して身を硬くする私に、アレクシスは励ますように囁きかけてくれる。
 
 楽団が、美しい調べを奏で始めた。
 
 向かい合ったアレクシスと互いに一礼して、再び差し出された手を取る。互いの手を軸にしてゆっくりとターンすると、豪華なドレスの裾が揺れた。
 
「綺麗だ。ヴィオラ」
 
 手を取り合ってゆるやかなステップを踏みながら、アレクシスがうっとりと言う。
 
「あなたも素敵です。アレクシス」
 
 狼のような黒髪を綺麗に撫でつけ、濃紺の礼服を着こなしたアレクシスは、本当に立派だった。まさに、次の国王に相応しい品格と勇ましさ。
 
 でも私は、この赤い瞳の奥に宿る、少年っぽい煌めきが好きなのだ。
 
 最初のダンスを無難にこなし、私たちは万雷の拍手の中で礼をした。
 
 祝宴が始まった。
 
 謁見の間から続く回廊や大広間に、大勢の人々が少しずつ流れていく。給仕や使用人たちも出入りを始め、場は一気に賑やかになった。
 
 主役であるアレクシス——と、私——は、次々と挨拶に来る貴族たちの対応で座るヒマもなかった。しばらくの間、ひっきりなしにおべっかを聞く羽目になった。
 
「わたしの婚約者が、少し疲れてしまったようだ。少しの間、静かなところで休ませてもらう」