私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


「自分の気持ちに正直に生きる。ヴィオラさま、あなたが教えてくれたのよ」
 
 その瞬間、私はセリーヌ嬢がこんなにも晴れやかな顔をしている理由が分かった。
 
 これからはもう、父の支配を受けることはない。これはセリーヌ嬢にとって追放ではない。新たな出発なのだ。
 
「ありがとう、ヴィオラさま」
 
 いよいよ、別れの時がきた。セリーヌ嬢は馬車に乗り込むと、名残惜しそうに小窓から顔を覗かせた。
 
「またいつか、お茶会をしましょう。できますよね?」
 
 思わず叫ぶように言った私の声が、震えていた。その肩を、アレクシスがしっかりと抱いてくれる。
 
「もちろんですわ」
 
 セリーヌ嬢が、弾けるような笑顔を見せる。彼女のこんな顔は、父のそばでは決して見られなかっただろう。
 
 仮にも時期王妃となる立場も忘れ、私は子供のように大きく手を振った。押し寄せる寂しさと、喜ばしさも噛み締めながら。
 
 ひっそりと去っていく小さな馬車を、私たちはいつまでも見送っていた。