私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 上手く言葉が出てこない。彼女は気丈に言うけれど、こんなの、実質的には追放と同じではないか。セリーヌ嬢には、なんの罪もないのに。
 
「ヴィオラさま……お友達になれて、嬉しかったですわ」
 
 彼女が、私の手を取った。柔らかな細い指に、きゅっと握りしめられる。
 
「くれぐれも、お体には気をつけて。辺境では、野生動物や虫の害もあるかもしれない……」
 
 寂しさと苦しさが、一気に噴き出してくる。こんな形で、離れ離れになるなんて。
 
 結果的には、私がセリーヌ嬢から父を奪い、婚約するはずだった人を奪い、辺境に追いやることになってしまった。
 
 当て所のない罪悪感で、胸がいっぱいになる。決して、セリーヌ嬢を不幸になどしたくなかったのに。
 
「どうかご親戚を遠慮なく頼って、健やかに暮らしてください。いや、なにかあったら私が——」
 
 やたらとおしゃべりになってしまった私を、セリーヌ嬢は黙ったまま抱き締めてくれた。
 
「大丈夫。わたくしは、大丈夫よ。これからわたくしは、もっと自由に……自分の気持ちに正直に、強く生きます」
 
 そっと体を離したセリーヌ嬢の顔は、やっぱり晴れやかだ。妖精のように愛らしい顔が——少しの不安と、たくさんの希望で輝いている。