私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 小さく質素な馬車が、城の裏手の道にぽつんと停まっている。
 
 私とアレクシスはフードのついたマントに身を包み、人目を忍んで馬車に向かってひた走った。
 
「ヴィオラさま……アレクシス殿下!」
 
 馬車の中にいたセリーヌ嬢が、私たちを見つけて驚いたように目を見開く。
 
「もう、行ってしまわれるのですね」
 
 駆け寄りながらも声をかけると、セリーヌ嬢が小さく頷く。いつも高価で品質のよいドレスを着ていたのに、今は町娘のような質素なワンピース姿だ。
 
「会いにきてくださって、嬉しいわ」
 
 少しの間、沈黙が流れる。なんと言っていいか、分からなかった。ずっと会いたかったのに、なにを伝えたらいいか分からない。
 
 セリーヌ嬢はいつもの清らかな笑みを浮かべて、私たちを交互に見て言う。
 
「おふたりとも……おめでとうございます。本当にお似合いですわ」
 
「ありがとう、セリーヌ嬢」
 
 アレクシスが、どこかほっとしたように返答した。彼女の表情が、明るかったからだろう。
 
 セリーヌ嬢が私に向き直って、さえずるように言う。
 
「わたくしは大丈夫。寂しくなりますけれど……お手紙を出しますわ」
 
「ええ、ぜひ」
 
「これから暮らすところは、自然が豊かな場所なんですって。どんな出会いがあるのか、今から楽しみですわ」
 
「それは……よかった」