私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


「うん……縁者を頼って、静かに暮らすんだそうだ」
 
 エルディシア公爵の失脚に伴い、セリーヌ嬢は王都での華やかな暮らしからは離れることとなった。
 
「……もっと、一緒にお茶会したかったな」
 
 ぽつんと、本音がこぼれる。彼女は今、どうしているのだろう。
 
 王都から離れて暮らすことに、不安でいっぱいになっていないだろうか。恐ろしい存在だったとはいえ、父への厳罰に心を痛めてはいないだろうか。
 
「また会えるわよ。誰かがダメって言うなら、お忍びで訪ねていけばいいじゃない。それがヴィオラでしょ?」
 
 軽い口振りに、思わず笑ってしまう。マリエルは私が少女の頃から、こうと決めたらさっさと行動に移してしまうのをそばで見ていたのだ。
 
「……ありがとう」
 
 マリエルがにっこりと頷く。
 
 雲ひとつない空の下、涼しい風が吹き抜ける。橙色を帯びてきた夕陽に、秋の気配が滲んでいた。