私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません


 目を開けると、すでに日は高いようだった。
 
「しまった……! あ、いや……休みだった……」
 
 ガバッと起き上がろう……とするが、出来ない。呑気に眠っているアレクシスの腕が、私をガッチリ抱きしめていた。
 
「重た……」
 
 それにしても、彼の腕はとてつもなく重い。身体全体が大柄な上に筋肉質だから仕方ないが、眠っているとなおさら重たかった。
 
 苦労して腕の中から抜け出し、アレクシスのことはごろんと転がして仰向けに寝たままにしておく。
 
「いた……っ」
 
 立ち上がると、足の間にズキンと痛みが走った。大事な部分に切り傷がついたような、皮膚がぐいっと引っ張られるような。
 
 あまり経験のない痛みだが、そこまで辛くはない。
 
 それよりも、体のあちこちに筋肉疲労が溜まっている感じがした。なにしろ、ほとんど一晩中愛を交わしていたのだ。
 
 昨夜のことを思い出すと——まだ、ふわふわと夢の中を漂っているかのようだ。
 
 肌に施される手のひらの愛撫。汗と吐息の湿り気。抱き合った腕や手の力の強さ。そしてそれ以上に、叫ぶように伝え合った愛の言葉——
 
 ふるふると頭を振って、甘い記憶は一旦思考から追い出した。恥ずかしくて、ひとりでじたばたしてしまいそうだ。
 
 クローゼットを勝手に漁って、アレクシスの大きなシャツを拝借した。ぶかぶかだが、丈は膝の辺りまである。
 
 ついでに、アレクシスがおそらく部屋で着ているであろうガウンも取り出した。まだ裸で寝ている彼に、渡してあげよう。
 
 湯浴みしに行きたいところだが、浴場までは少し距離がある。晴れて公認の仲になったとはいえ、堂々と部屋着でアレクシスの部屋から出ていけるはずがなかった。
 
 腕組みしていると、昨夜に扉のそばで取り落とした自分の荷物が落ちているのを見つけた。
 
 すっかり忘れていた。お酒とおつまみがあるが、朝食には少々刺激が強い。
 
 私は昨夜持ってきた巾着を拾い上げ、再びベッドへと向かった。ちょうど、アレクシスが寝ぼけ眼を開いているところだった。
 
「ん……ヴィオラ……おはよう……」
 
「おはようございます。まだ眠そうですね」
 
 巾着をベッド脇の小机に置きながら、声をかける。
 
「ん……」
 
 半分目を閉じたまま、アレクシスが手招きする。そばに寄るとぐいっと手を引かれ、私は彼の腕の中に飛び込む羽目になった。
 
「もー。起きてください。もう昼前ですよ?」
 
「いやだ。まだねる……」
 
「仕方ないなぁ」
 
 アレクシスは目を閉じて寝たフリをしたが、口元は笑っている。裸のままだが、昨夜の濃厚な色気はどこかに消し飛んでいた。