私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません

 
 あっ、と思う間もなく、アレクシス殿下は子猫を抱えるような軽やかさで私を部屋の奥へと導いた。
 
「……殿下……?」
 
「アレクシスと呼んでくれ」
 
 熱い声が、耳元に吹き込まれる。私は酔わされたようにうっとりしながら、彼のたくましい首に手を回した。
 
「アレクシス……」
 
 大きなベッドの真っ白なシーツの上に、そうっと横たえられる。彼は潤んだように優しげな目線を私に注ぎながら、ゆっくりと私の頬を撫でた。
 
「まだ、二人きりのときに返事を聞いていない」
 
 ひっそりと言うアレクシスの声が、艶めいていく。彼は一言一言を噛み締めるように、大切そうに告げてくれた。
 
「ヴィオラ。オレの妻になってくれるか?」
 
「はい……」
 
 迷わず答えれば、アレクシスの愛おしそうな満面の笑みが目に映った。なんて整った、男らしい——なのに、愛嬌のある顔だろう。
 
「キスしても?」
 
「ええ」
 
 アレクシスの唇が、ゆっくりと私の唇と重なる。触れ合ったところから、暖かい高揚が一気に駆け巡り、全身を満たしていく。
 
 そのまま私をぎゅっと抱き締めたアレクシスが、長い溜め息をついた。
 
「やっと……やっと、こうしてお前を可愛がることができる」
 
 間近に聴こえる掠れた声と吐息に、鼓動が高鳴っていく。これまでにないほど近くで感じたアレクシスの体の温もりは、あまりに男性的だった。
 
「か、可愛がるって……」
 
 やっとのことで、言葉を絞り出す。からかうように返すつもりだったのに、出てきたのは恋する人の前で震える乙女の声そのものだった。
 
「ヴィオラ。ずっと、お前が欲しかった」