私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません

 
 私の体をぎゅっと抱きしめたまま、アレクシス殿下が耳元で囁く。持っていた巾着は床に落としてしまったが、それも意識から外れてしまった。
 
「なっ……ど、どうしたんですか」
 
 慌てて、アレクシス殿下の胸を軽く押す。覆い被さるように迫ってくる体温に、ドキドキしてしまった。
 
「だって、やっと会えたから。つい……」
 
 照れたように笑う殿下は、まだ腕の中に私を収めたまま愛おしげな視線を送ってくる。
 
 この人……こんなにカッコよかったっけ……。
 
 まともに目を合わせていると、改めて気づいてしまう。アレクシス殿下は、惚れ惚れするような美男子だ。
 
 鋭いが今は優しい光を湛えた瞳は赤くとろかすようで、形良い唇は今にも笑い出しそうにうっすらと弧を描いている。
 
 そして、少し癖のある硬そうな黒い髪。剣を振るって何度もこの髪が乱れるのを見たが、今は優雅に額と目の端の辺りにはらりとかかっていた。

「やっと会えたって……数日前に、婚約の手続きをしたばかりでしょ」
 
 ついつい、強がるような言葉が出てくる。本当は私の方こそ、もう何日も会えなかったような寂しさに焦がれていたくせに。
 
「何年も、息を止めて待っていたような気分だ」
 
 アレクシス殿下は、やっと呼吸が出来たかのように大きく息をついた。訴えかけるような目で、そっと呟く。